日本では毎年12月になると、その年を象徴する「今年の漢字」が発表され、多くの注目を集めます。このイベントは、国民がその年に最も印象に残った出来事やムードを一字で表現することから、様々な議論や話題が巻き起こります。
本記事では、過去に選ばれた「今年の漢字」を振り返り、それぞれの年にどんな大きな出来事があったのかを解説します。これにより、選ばれた漢字がどのような意味を持ち、なぜその年の象徴とされたのかが明らかになります。
「今年の漢字」とその背景
「今年の漢字」は、毎年の社会状況や民心を象徴する一文字を選んで発表するイベントです。この取り組みは1995年に日本漢字能力検定協会によって開始され、日本国内で広く認知されています。
発表は毎年12月12日、「漢字の日」に行われます。この日は、漢字への理解を深め、日本文化の一環として漢字の重要性を広めるために設定されました。日付は「いい(1)字(2)月(1)二(2)日」という語呂合わせから選ばれています。
発表は午後2時に行われ、場所は京都の清水寺で、その寺院の貫主が大きな和紙にその漢字を書きます。この様子はテレビやインターネットで中継され、年末まで清水寺で展示されるため、多くの人が実際に見に訪れます。
清水寺での「今年の漢字」発表の理由
「今年の漢字」が清水寺で発表される背景には、いくつかの重要な理由があります。まず、日本漢字能力検定協会の本部が京都に位置しており、この地域の文化的・歴史的重要性が高いことが挙げられます。清水寺は、国内外から多くの観光客が訪れる日本を代表する寺院の一つです。
また、清水寺の貫主であった森清範さんが、日本漢字能力検定協会の理事を歴任していたことも、この場所での発表が行われる大きな理由です。これらの背景により、清水寺は「今年の漢字」を発表するにあたって象徴的かつ意義深い場所とされています。
「今年の漢字」を提案する方法と募集のタイミング
毎年、社会の動向や出来事を象徴する一文字の漢字を選ぶ「今年の漢字」への提案は、どなたでも参加可能です。
参加方法は個人の場合、郵便はがき、設置された専用応募箱、またはデジタルデバイス(スマートフォン、タブレット、パソコン等)を通じたオンライン応募のいずれかを選択できます。団体では、教育機関や職場等が専用の応募用紙を利用して一括で応募する形式もあります。
このイベントの応募期間は毎年11月1日から12月5日までと設定されており、応募箱を利用する場合の締め切りは12月3日です。
「今年の漢字」の決定プロセス
日本国内から広く一般公募により集まった漢字の中から、その年を象徴する一文字が選ばれます。選定は、提案された漢字の中で最も多くの支持を集めた文字を採用する方式です。
また、過去に選出された「今年の漢字」の例を挙げ、それぞれの漢字が選ばれた背景にある社会情勢や重大な出来事についても探っていきます。
「今年の漢字」歴代選出一覧と背景解説
各年に選出された「今年の漢字」は、その年の主要な出来事や社会情勢を象徴しています。
それぞれの漢字が選ばれた背景です。
平成7年から平成11年までの一覧
平成7年(1995年)「震」
- この年は、阪神・淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件など、日本を揺るがす大きな災害と事件が連続したため、多くの国民が不安と恐怖に震えた年です。
平成8年(1996年)「食」
- O-157による食中毒事件や狂牛病の発生など、食に関連する問題が多発。また、公的機関の汚職事件が社会問題として注目され、公金を「食い物」にする行為が批判された年です。
平成9年(1997年)「倒」
- 大型金融機関の倒産が相次ぎ、日本経済に大きな影響を与えました。同時に、サッカー日本代表がワールドカップへの初出場を決めるなど、スポーツ界では喜ばしい「倒」が見られた年です。
平成10年(1998年)「毒」
- 和歌山で発生したカレー事件など、毒物を使った犯罪が注目されました。また、環境汚染問題としてダイオキシンや環境ホルモンの問題も深刻化し、公害や健康への「毒」に対する不安が高まった年です。
平成11年(1999年)「末」
- 世紀末ということで、多くの社会問題や事件が「世も末」と嘆かれる状況が続きました。しかし、同時に新たな千年紀への期待と希望を「末広がり」として捉える人々も多かった年です。
2000年から2004年までの「今年の漢字」一覧とその年の主要出来事
毎年、その年の日本や世界の出来事を象徴する「今年の漢字」が選ばれています。以下は2000年から2004年までの選出された漢字と、それに関連する主要な出来事です。
平成12年(2000年)「金」
- シドニーオリンピックでの高橋尚子や田村涼子の金メダル獲得、南北朝鮮の首脳が会談、そして二千円札や新型500円硬貨の発行が、この漢字を象徴しています。
平成13年(2001年)「戦」
- アメリカでの9月11日のテロ攻撃が発生し、その後始まった対テロ戦争やスポーツ界での記録的な戦いが、この漢字を象徴しています。
平成14年(2002年)「帰」
- 北朝鮮からの拉致被害者の帰国や、日本の社会や文化の「原点回帰」現象が、この漢字を選ばれる背景となりました。
平成15年(2003年)「虎」
- 阪神タイガースのリーグ優勝や、イラク派遣など「虎の尾を踏む」ような困難な国際問題が、この漢字の選出理由です。
平成16年(2004年)「災」
- 新潟県中越地震、浅間山の噴火、そして日本各地で発生した自然災害が、この漢字の選出理由となりました。
これらの漢字は、それぞれの年に何が注目され、どのような課題があったのかを示しています。
2005年から2009年までの「今年の漢字」とそれを選んだ理由
「今年の漢字」は、その年の日本で起こった重要な出来事や世相を象徴する漢字一文字を表します。以下は2005年から2009年までの選ばれた漢字とその背景です。
平成17年(2005年)「愛」
- 愛知県で開催された国際博覧会「愛・地球博」、卓球の福原愛選手の活躍、皇族の結婚など、「愛」の名が関連する多くの出来事があった年です。
平成18年(2006年)「命」
- 皇室の悠仁親王の誕生、いじめによる自殺問題、虐待死の報道、医療体制の問題など、「命」の大切さがクローズアップされた年です。
平成19年(2007年)「偽」
- 大手食品メーカーによる偽装問題や、防衛省の汚職、年金記録の問題など、偽りが社会問題となった年です。
平成20年(2008年)「変」
- 首相交代、食の安全性の見直し、経済情勢の変動、気候変動の影響など、大きな変化が多発した年です。
平成21年(2009年)「新」
- 民主党による新政権が発足し、新型インフルエンザが流行したり、イチロー選手が新たな記録を打ち立てたりと、「新しい」出来事が目立った年です。
これらの漢字は、それぞれの年を象徴する出来事と密接に関連しており、その年の日本の世相を色濃く反映しています。
2010年から2014年の「今年の漢字」とその背景
「今年の漢字」は毎年その年の日本の社会や出来事を象徴する漢字一文字が選ばれます。以下は2010年から2014年までの選ばれた漢字とその背景です。
平成22年(2010年)「暑」
- この年は、全国的に観測史上最高の気温を記録する猛暑となりました。また、チリ鉱山事故で作業員が暑苦しい地中から全員無事に救出されるという事件がありました。
平成23年(2011年)「絆」
- 東日本大震災をはじめとする複数の災害が日本を襲い、国民間の絆が強調された年です。また、なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップで優勝し、チームの絆が評価されました。
平成24年(2012年)「金」
- ロンドンオリンピックでのメダルラッシュや932年ぶりに観測された金環日食が話題になりました。
平成25年(2013年)「輪」
- 2020年東京オリンピックの開催が決定し、「輪」の象徴として捉えられました。同年、台風による被害への支援活動も「支援の輪」として広がりました。
平成26年(2014年)「税」
- 消費税率が5%から8%に17年ぶりに引き上げられたことが大きな社会的影響を及ぼしました。この増税が国内経済に与えた影響は深刻でした。
これらの漢字は、それぞれの年を代表する出来事や社会的な動きを象徴しており、その年の日本の世相を反映しています。
2015年から2019年の「今年の漢字」とその背景
「今年の漢字」は毎年、その年を象徴する漢字一文字が選ばれ、公表されます。以下は2015年から2019年までの選ばれた漢字とその背景です。
平成27年(2015年)「安」
- 安倍内閣による安全保障関連法案が成立しました。
- 世界的にテロ事件や異常気象が頻発し、社会に不安が広がりました。
- 建築偽装問題や企業の不正が発覚し、生活の安全が問われました。
- 芸人とにかく明るい安村の「安心してください」のフレーズが流行しました。
平成28年(2016年)「金」
- リオデジャネイロオリンピックで日本選手の金メダル獲得が目立ちました。
- 野球選手イチローが通算3000本安打の大記録を達成しました。
- 日本はマイナス金利を初導入しました。
- シンガーソングライターのピコ太郎が金色の衣装で世界的に注目されました。
平成29年(2017年)「北」
- 北朝鮮によるミサイル発射が相次ぎ、日本近海に落下しました。
- 九州北部で豪雨災害が発生しました。
平成30年(2018年)「災」
- 大阪北部地震や西日本豪雨、台風21号、北海道地震など、日本国内で災害が多発しました。
令和元年(2019年)「令」
- 新しい元号「令和」が発表され、その名は日本の古典から引用されました。
- 日本各地で豪雨や台風が頻発し、多数の警報や避難勧告が発令されました。
- 消費税が8%から10%に引き上げられ、軽減税率制度が導入されました。
これらの漢字は、それぞれの年を象徴する社会や自然の出来事を反映しており、その年の日本の世相を表しています。
2020年(令和2年)から2023年(令和5年)の「今年の漢字」の意味
令和2年(2020年)「密」
- 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「密閉・密集・密接」という3つの密を避けることが強調された年。
- オンライン通信の普及により、遠く離れた人々とも密接な関係を保つことが一般的になりました。
- 政界や芸能界で秘密裏の話題やスキャンダルが多く見られました。
令和3年(2021年)「金」
- 東京オリンピックでの日本選手の金メダル獲得が目立ち、多くの記録が更新されました。
- 野球選手大谷翔平が米大リーグでMVPに輝き、藤井聡太棋士が最年少四冠を達成し、ゴルファー松山英樹が日本人初のマスターズ優勝を果たしました。
- 新型コロナウイルスの影響で生活困窮者への金銭的支援が拡大しました。
令和4年(2022年)「戦」
- ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、国際的な緊張が高まりました。
- 北朝鮮のミサイル発射が頻発し、地政学的な緊張が継続しました。
- 経済的には円安と物価高騰が国民生活に大きな影響を与え、「生活戦争」とも称される厳しい状況が続きました。
- スポーツの世界では冬季オリンピックやサッカーワールドカップなどで激しい戦いが繰り広げられました。
令和5年(2023年)「税」
- インボイス制度が導入され、税制に関する変更が多く行われました。
- 増税や減税を巡る政策論争が活発に行われ、経済政策が注目されました。
これらの漢字は、それぞれの年の日本の世相や国際情勢、経済状況を象徴しており、それぞれの年に何が起こったかを示しています。