「書く」「描く」「画く」はすべて「かく」という同音異義語ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
その違いや使い分け方を例文を使ってわかりやすく解説します。
【書く】と【描く】と【画く】の違いと使い方の例文を紹介していきますので、どの言葉を使えば日本語として正しいのか迷った方は、ぜひ参考にしてみてください。
「書く」と「描く」と「画く」の意味の違い
- 「書く」
文字を書くことを表現する際に使います。 - 「描く」
絵や図を細かく描くことを表現する際に使います。 - 「画く」
絵や図を描くことを表現する際に使います。
「書く」と「描く」と「画く」の使い方の違い
「書く」
- 意味: 文字や符号を記す、文章を作る
- 例文:
- 「論文を書くために史料を集める」
- 「姉は綺麗な字を書く」
「描く」
- 意味: より細かな絵や模様を描く
- 例文:
- 「先生が新しいマンガを描いたらしい」
- 「描いたグラフが思ったよりわかりやすかった」
「画く」
- 意味: 図や絵を描く
- 例文:
- 「簡単に図を画いて理解しようとした」
- 「道路に停まっている車を画く」
「書く」と「描く」と「画く」の使い分け方
- 「描く」と「画く」は「かく」という読み方だけでなく「えがく」と読むこともできます。使い方はほとんど同じですが、次のように使い分けられることもあります:
- 「描く」: 「マンガを描く」など、細かな部分まで書き込むときに使用
- 「画く」: 「自転車を画く」など、何かを絵や図として書きとるときに使用
- ただし、「画く」は常用漢字ではないため、現在では絵や図を描く際には「描く」を使うのが一般的です。
- 一方、「書く」は文字や文章を書く際に使用され、「えがく」と読むことはありません。したがって、小説などで風景の描写や登場人物の心理描写を表現する際には「描く」を使います。
明確な違いのまとめ
- 「描く」 > 「画く」 > 「書く」
この順番でより細かに表現されます。
これが「書く」「描く」「画く」の違いと使い方です。
少し掘り下げてみたいと思います。
「書く」とは
「書く」とは、文字や符号を記したり、文章を作ることを意味します。
使い方の例
- 「手紙を書く」
- 「小説を書く」
- 「サインを書く」
- 「物語を書く」
これらが「書く」を使った一般的な表現です。
「書く」を使った言葉
- 「売り家と唐様で書く三代目」
- 意味:
初代が苦労して残した財産も、三代目となると道楽にふけり家を売りに出すようになることから、仕事をしないで道楽に耽った人を皮肉る言葉です。 - 読み方:
うりいえとからようでかくさんだいめ
- 意味:
- 「頭を掻くか字を書くか」
- 意味:
文字を書くのが苦手な人が字を書かなければならなくなり困り果てている様子をからかう言葉です。
「頭を掻く」は恥ずかしく思ったり照れたりしたときの仕草の一つであることから、「恥をかくか字を書くか」という意味になります。
- 意味:
「書く」の類語
- 「執筆」:文章を書くこと
- 「表記」:文字や記号を使って書き表すこと
- 「刊行」:書籍などを印刷して世に出すこと
- 「記載」:書類や書物などに書いて記すこと
「描く」とは
「描く」とは、細かな絵や模様を描くことを意味します。
「描く」の読み方
- 「かく」
- 「えがく」
「えがく」の場合、絵や図を描くことに加え、物事の様子を文章や音楽で表すこと、物事のありさまを心に思い浮かべることも意味します。
表現例
- 「絵を描く」
- 「マンガを描く」
- 「イラストを描く」
「描く」を使った言葉
- 「絵に描いた餅」
- 意味:
絵に描いた餅はどんなに美味しそうであっても食べられないことから、実際には役に立たない物事を指すことわざです。
- 意味:
- 「氷に鏤め脂に描く」
- 意味:
氷に彫刻をしても、脂に絵を描いても残らず消えてしまうことから、骨を折って取り組んでも結局は徒労に終わることを意味することわざです。 - 読み方:
こおりにちりばめあぶらにえがく
- 意味:
「描く」の類語
- 「表現」:心理や精神などの内面的なものを客観化すること
- 「叙述」:物事について順を追って述べること
- 「名状」:物事のありさまを言葉で表現すること
「画く」とは
「画く」とは、図や絵を描くことを意味します。
「画く」の読み方
- 「かく」
- 「えがく」
また、「画く」は常用外漢字であるため、今日ではほとんどの場合「描く」が使われています。
表現例
- 「表を画く」
- 「グラフを画く」
- 「円を画く」
- 「線を画く」
「画く」を使った言葉
- 「様によりて葫蘆を画く」
- 意味:
お手本や具体例に従ってひょうたんを描くことから、創意工夫が見られないことを指す故事成語です。 - 読み方:
ようによりてころをえがく
- 意味:
- 「右手に円を画き左手に方を画く」
- 意味:
右手で円を描きながら左手で四角形を描くことを表す故事成語です。
同時に二つのことをしようとすると、どちらも上手くいかないことを意味し、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉と同じ意味を持ちます。 - 読み方:
ゆうしゅにえんをえがきさしゅにほうをえがく
- 意味:
「画く」の類語
- 「描画」:絵を描くこと
- 「描出」:物事のありさまや考えなどを絵画や文章に描き出すこと
- 「染筆」(せんぴつ):筆に墨汁などを含ませて書画を書くこと
「書く」、「描く」、「画く」の例文
「書く」の例文
- 利き手を怪我してから、字を書くのに一苦労である。
- 文章を書くときに気をつけることとして、一つの文章が長くなりすぎないことが挙げられた。
- 彼女は部屋の隅で縮こまり、「のの字」を書いている。
- 字を書く機会が減った昨今だからこそ、折に触れて手紙や葉書を親しい人に送るようになった。
- 今週までにゼミのレポートを書かなければならないのに、友達とマージャンばかりしていたらあっという間に当日の朝になってしまった。
- 「何か手紙でも書いてみよう」とすらすらとそれらしきものを書いたが、出す友達もいないと気づき、急にモヤモヤして便箋を破り捨てた。
- 息子はまだ4歳なのに、ひらがなもカタカナも書ける。今度は漢字に挑戦したいと言うので、将来大物になるのではとひそかに期待している。
「のの字を書く」
例文3の「のの字を書く」とは、指先でひらがなの「の」を書くような仕草を指す言葉で、恥ずかしい時や拗ねたりする時の仕草を表すときに使います。
「描く」の例文
- 絵を描く人には、紙にペンで描く人とパソコンで描く人の二つのタイプがいる。
- 友人から聞いただけだったが、彼は私が胸に描いていた通りの人間だった。
- 「夢を描くのは自由だ」と長期休暇中に海外旅行で行きたい国を挙げた。
- 知り合いはお金持ちの夢を現実化するために「もし1億円あったらどうするか」といつも真剣に考えていたが、「絵に描いた餅のようなことでも良い思考実験になる」と言っていた。
- 友達はイラストを描くのがうまかったので、イラストレーターにでもなるかと思っていたが、まさかアニメ監督になるとは思わなかった。
- 漫画を描く人たちは、それだけでは食っていけないのでアルバイトをしていると聞いていたが、あそこまでひどいとは思わなかったよ。
- 漫画を描くには画力だけではダメで、魅せるコマ割りやストーリー、魅力ある登場人物、台詞の力強さなど実に様々な要素が必要だ。
「胸に描く」
例文2の「胸に描く」とは、想像すること、思い浮かべることを意味します。
「夢を描く」
例文3の「夢を描く」とは、将来への希望を心に描くことを意味します。
「画く」の例文
- 後輩に次のプレゼン資料のためのグラフと表を画くように伝えた。
- 定規を三つ使って平行線を画く練習を小学生の時に習った覚えがある。
- 近くの川を画くために、スケッチブックを持って行った。
- グラフを画いていたら楽しくなり、凝ったものにしたりカラフルにしてみた結果、グラフに気を取られて内容が頭に入ってこないと部長にダメ出しされた。
- 上司から「プレゼンテーションが文字ばかりで見にくい」とダメ出しをされたので、簡単な図を画いてわかりやすくしようと努めた。
- 算数の授業で先生は黒板にコンパスを使って円を画こうとしたが、コンパスの調子が悪くうまくいかなかったので、手で適当に丸を画いていた。
- 確かに冷静になって見てみると、私の画く線と師匠の画く線には明らかな違いがあったが、いったい何が違うのかと言われるとうまく言葉にできなかった。
「画く」について
常用外漢字であるため、基本的には「画く」ではなく「描く」と表記されることがほとんどです。
まとめ
「書く」「描く」「画く」の使い分け方のまとめです。
- 「書く」:文字を書くことを表現するときに使う。
- 「描く」:絵や図を細かく描くときに使う。
- 「画く」:絵や図を描くときに使うが、常用外漢字であるため基本的には「描く」を使う。
相手とのコミュニケーションが深めるためには、正しい表現を知ることは重要です。