日本各地にはさまざまなお団子にまつわる風習があります。
例えば、十五夜に月を愛でる際に楽しむ「お月見団子」や、桜の下で味わう「お花見団子」、お盆に供える「迎え団子」と「送り団子」など、季節の行事ごとに特別なお団子が存在します。
その中でも、あまり知られていない「十六団子」には、どのような意味が込められているのでしょうか？
そして、この団子を特に大切にする地域はどこなのでしょうか？
今回は、十六団子の意味深い由来と、それを食べる地域の文化に迫ります。
十六団子の起源と意義
「十六団子」とは、一般的には「じゅうろくだんご」と読まれ、その名の通り、16個の団子から成り立っています。
日本には古くから山に神が宿るとの信仰があります。具体的には、農作業の開始を告げる3月16日に、農耕を司る神が山から田に下りてくるとされ、一方で、収穫後の11月16日（一部地域では10月16日）にはその神が田から山へと戻ると考えられています。
この古い信仰は「神去来（かみきょらい）」と呼ばれ、その日には杵と臼を用いて餅をつくことで、神への感謝と農耕の成功を祈願します。この餅つきの音が、神去来の日であることを神に知らせる役割を持っていたと言われています。
この風習にちなんで、餅を16個の団子に丸め、それを神に捧げることが「十六団子」と呼ばれるようになりました。この日は「十六団子の日」として特に記され、農耕に関連した神事として重んじられてきました。
ただし、この風習がいつから始まったのかについては明確な記録はありません。
十六団子の由来：なぜ16日に16個の団子を供えるのか？
十六団子という習慣は、なぜその特定の数と日付が選ばれたのでしょうか？
この風習は「嘉祥の日」と呼ばれる歴史的な背景があります。
平安時代中期に疫病が流行した際、仁明天皇は不吉を避けるため元号を「承和」から「嘉祥」へと改めました。当時、元号は天災や疫病などの際に改めることがしばしば行われていましたが、一世一元の制は明治時代になって初めて導入されました。
「嘉祥」と名付けられた年（848年）、仁明天皇は神の啓示を受け、「6月16日に16に因んだお菓子を神前に供える」という指示を実行しました。これにより、16個の菓子を供えた儀式が行われ、疫病が収束に向かったとされています。
この出来事がきっかけで、毎年6月16日が「嘉祥の日」と定められ、「嘉祥菓子」を食べる習慣が江戸時代まで続きました。
このような歴史的背景から、「十六団子」は農耕を始める3月16日と、収穫が終わる11月16日に、16個の団子を神前に供える風習として定着しました。この風習は農作業の節目として、また厄除けや健康を祈る意味合いを込めて、今に伝えられています。
どの地域で「十六団子」がお祝いとして食べられるの？
「十六団子」という伝統的な行事は、特に岩手県や青森県を含む東北地方、さらには北陸地方でも広く行われています。
それぞれの地域や家庭によって、団子の数や作り方、味付けにも独自のアレンジが加えられています。
現代では、家庭で杵と臼を使って餅をつくことは少なくなりました。多くの家庭では、より手軽に作れる米粉や上新粉を用いて、神様に供える団子を作るのが一般的です。
昔はお供え後、そのまま団子を食べることが多かったのですが、今ではもっと様々な味わい方が試されています。団子にきな粉やあずきをまぶしたり、みたらし団子にしたり、お汁粉の中に入れたりと、食べ方は家庭や地域によってさまざまです。また、団子の数は16個というこだわりを持たず、農作業の開始時や田植えの際に食べるなど、それぞれの節目に合わせた習慣も見られます。
この風習は年に2回、特定の日に行われるのが一般的で、昔はこの日に餅つきをして神様に年の節目を告げていました。現在では餅つきが少なくなったことが少し寂しいですが、集まった家族や友人と共に十六団子を楽しむことで、その伝統を楽しく味わうことができます。
まとめ
日本の多彩なお団子文化において「十六団子」は特別な位置を占めます。以下はその起源と地域的特徴に関する要点です：
- 十六団子の意義と由来: 日本では古くから山に神が宿るとされ、農耕の神が山から田へ下りる3月16日と、収穫後に山へ戻る11月16日に団子を捧げる「神去来」の風習があります。
- なぜ16個か: 平安時代中期、疫病対策として元号を「嘉祥」と改めた際、天皇が神からの啓示により6月16日に16個の菓子を供える儀式を行いました。これが「嘉祥の日」として定着し、農耕関連の日にも16個の団子を供える習慣が生まれました。
- 地域的特徴: 特に岩手県や青森県などの東北地方、北陸地方でこの行事が盛んです。各地域や家庭により団子の作り方や味付けが異なり、米粉や上新粉を使用するのが一般的です。
- 食べ方の多様性: 昔は供えた団子をそのまま食べていましたが、現在はきな粉をまぶしたり、みたらし団子にするなど様々な食べ方が楽しまれています。
十六団子の風習は、古い信仰と現代の生活が織り交ざる日本の文化的特色を反映しています。
