「棚に上げる」というフレーズは、「都合の悪い事柄には言及しないようにする」というニュアンスを持っています。
この表現は、自分の短所や問題点を隠して他人を批判する際にしばしば使われることがあります。使い方が難しい言葉であるため、適切な使い方に不慣れな方も多いかもしれません。
本記事では、「棚に上げる」の具体的な意味とその使い方を、具体例を交えてクリアに説明していきます。
「棚に上げる」の意味:問題から目をそらす
【棚に上げるの意味解説】
問題から目を逸らし、不都合な事実に触れないようにする行為を指します。
「棚に上げる」という表現の読み方は「たなにあげる」です。
もともとは商売で商品を一時的に売らないように棚上げすることから転じて、都合の悪いことを意図的に無視するという意味で使われるようになりました。
『棚に上げる』は以下のような意味合いを含みます。
- 問題を無視して知らん顔する
- 都合の悪いことに目をつぶる
- 必要な対応を先延ばしにする
「棚に上げる」の使用方法と例文紹介
「棚に上げる」という表現は、自分の過ちを無視して他人の非を批判する際によく用いられます。
この表現の誤用は誤解を招く恐れがあり、不快な印象を与える可能性もあります。
以下、この表現を適切に使うための例文を示します。
例文①
・彼女が自分の過失を棚に上げて、ただ友人のミスばかりを非難しているのは、見ていて心苦しいです。
例文②
・問題の本質を棚に上げたまま、政府は別の話題で国民の注意をそらしています。
例文③
・息子の行為を棚に上げて、問題を学校側に押し付けるその親の態度には驚きました。
例文④
・人は自分の短所を棚に上げて、他人にばかり高い理想を求めると、周りからの信頼を失いかねません。
例文⑤
・納期が迫っているのに、大切な仕事を棚に上げてしまっている場合じゃない。後で自分が困るだけだ。
【棚に上げるの注意点】
「棚に上げる」は自己批判を避けつつ他人を非難する意味合いが強いため、使用する際は慎重に。特にビジネスシーンでは、必要な行動を先延ばしにする意味でも使われることがあり、そのような文脈で用いる際は注意が必要です。
「棚に上げる」の同義語・代替表現4選
「棚に上げる」にはいくつかの同義語や代替表現があります。
同義語や代替表現を知ることで、コミュニケーションが円滑になることがあります。
相手の理解度や状況に応じて、最適な言葉を選びましょう。
・棚上げにする
・目を閉じる
・医者の不養生
・ふりをする
同義語①棚上げにする
意味:問題を後回しにすることや、判断を先延ばしにすることを指す表現。
例)問題を棚上げにしても、何も解決されません。彼女と早く話し合うべきです。
同義語②目を閉じる
意味は以下の通りです。
1 目を閉じること。また、睡眠につくこと。
2 死ぬこと。
3 過失や問題を無視すること。
例)今回はお母さんが目を閉じてくれたけど、次回はお父さんに叱られるわよ。
同義語③医者の不養生
意味:他人に健康を勧める医者が自身の健康に注意を払わないことや、自分では実践しないことのたとえ。
例)管理栄養士がコンビニ弁当ばかり食べているなんて、まさに医者の不養生だよね。
同義語④ふりをする
意味:自らの行動や状況を装って他人に知らせないこと。
例)友人に責任を押し付け、知らんふりをする彼には腹が立ちます。なぜなら、彼は口を拭って知らん顔をしているからです。
「棚に上げる」と「棚上げ」の意味の違い
「棚に上げる」と「棚上げ」は類似していますが、具体的な意味には違いがあります。
「棚に上げる」は、不都合な事実に対して目をつぶることを意味し、しばしば否定的な状況で用いられます。
対照的に「棚上げ」は、何かを一時的に保留にしておくことを意味し、必ずしも否定的なニュアンスは含まれません。
「棚に上げる」はしばしば個人的な非難や自己保護の文脈で、「自分のことを棚に上げて」というフレーズで使われることが多いです。
一方で「棚上げ」は、仕事やプロジェクトなど具体的な事項に関して、一時的な中断や保留を指す用途で使用されます。
「棚に上げる」の英訳は『ignore one’s own faults』
「棚に上げる」の英語表現は『ignore one’s own faults』と言えます。
ignore one’s own faultsの意味:自分の過ちを無視する
この英語表現『ignore one’s own faults』は、
自分の過ちを無視する、つまり「自分の事を棚に上げる」という意味合いを持っています。
「棚に上げる」の反対語は『けじめをつける』
「棚に上げる」の対義語として挙げられるのが『けじめをつける』です。
けじめをつけるの意味:
- 道徳や規範に沿って行動や態度を整える。
- 物事に終止符を打つ。
けじめをつけるには以下のような意味があります:
- 行動や態度を道徳や規範に従って整える。
- 物事の結末をはっきりさせる。
例)今回の問題は、あなたの怠慢が原因です。何らかの形でけじめをつける必要があります。
「棚に上げる」が自分の問題点を無視することを意味するのに対し、「けじめをつける」は自らの行為に責任を持ち、問題に対処することを表します。
また、「けじめをつける」は個人の誠実さを示す行為としても使われ、プライベートと公的な行動の境界を明確にする場合にも用いられます。